2007年09月06日

+BOOK+ 完本 小津安二郎の芸術

著者:佐藤忠男

 この本は蓮實さんの「監督小津安二郎」の前に読むべき..と誰かが書いてありましたが、その通りでした。小津監督について、著者の佐藤忠男氏はいわゆる映画業界にずっといた人だから内部の事情もよく知っているみたいだ。しかも小津監督を実際に観たことがあるというのだから、かなり昔からその世界を知る人と言う意味では蓮實さんよりもかなりいろんな事物に精通しているといっていい内容。中学生でも読めてしまうくらいわかりやすい文章なのですが、これって批評する上では重要なことと思う。聞いたり読んだりした人がわからない批評や説法をしてもしようがないと思う。

 小津監督の撮影スタイル(いわゆるローアングルの成り立ち)から小津監督の生い立ち、両親との関係、戦争体験、結婚のこと、撮影の裏話、老年に向かっていく様子など、実に時代背景も含めて詳しく書かれている。

 蓮實さんが小津監督の作品を「断じて日本的などではない」というのに対して、とことん「日本的」だと語る著者は日本人として素直で正直だと思う。またブラジルでどうしても原節子に一目会いたいという熱烈な小津ファンの大学教授に会ったがこういう人たちこそが一番素直で良質は小津ファンである..などと語っているところなどとても共感がもてた。

 小津監督はアメリカ映画に影響を受けているという部分は、それがどういう作品なのかという詳しい情報も書かれてあったのが良かった。「東京物語」が「明日は来らず」、「出来ごころ」が「チャンプ」、「浮草物語」が「煩悩」・・などなど。

 でもひとつだけ、私が思うに小津監督の晩年に描かれた「滅び行くもの・老いの孤独」への感覚ってムルナウの「最後の人」に似ているんじゃないか..ということ。小津監督は意識していなかったかもしれないけれど、ムルナウのサイレント映画の中にあるユーモアと小津監督のサイレントのユーモアってどこか似ていると思う。またムルナウはいつも白衣をきて白い帽子をかぶっていたそうだが、これを真似たものが小津監督の白い帽子と白いシャツであることは明らかでもあるようだ。また清水宏監督の白い帽子もそうらしい。(『ドイツ時代のラングとムルナウ』のカタログより』)

 とはいえムルナウという人は始めて移動撮影をとった人であり、小津監督は移動撮影をとことん排除していった人であるのでそういう撮影方法としては全く異なってはいるけれど、テーマ的なものはよく似ていると思うのですよね。

 ところで、ムルナウの「ファントム」が紀伊国屋書店から届いたので、またムルナウもそのうち観てみようと思います。 

投稿者 nao : 00:00 | トラックバック (0) □103.BOOK(映画関連)□

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